父の夢は僕の夢
-orgon-
父は僕に何を望んでいたのだろう? 父は野球が好きで子どものころは僕に野球をやらせようとしていたように思う。当時はテレビと映画しか娯楽がなくて、テレビと言えば野球中継かプロレス中継というのがお決まりで、父もまた大いに影響を受け、草野球に熱中していたのだ。ところが僕は生まれつき運動は苦手で、その気がないから運動神経も発達するわけがない。運動なんか何が面白いのだろう? 僕はいつもそう考えながら父を見ていた。そんな父には別な面があった。絵が上手で、僕の宿題を代わりに描いてくれたりした。小学校では実は父が描いた絵が金賞に選ばれたこともあった。大人の柄だから上手に決まっている。今考えればかなり面白い父だった。それに文章を書くのも好きだったようで、僕たちが青森市に住んでいた頃に父が書いた文章がどこかの新聞の青森版に載ったときには切り抜いて保存していたのを記憶している。今はもう手元にはないが「営業マンとしてどうだったか?」というのような内容だったと思う。
僕は父の夢を叶えられなかった。息子であるし同様な志を持っていたにも関わらず文章書きにも絵描きにもなれなかった。